税務調査は原則として、税務署から事前に連絡があり、
日程調査をしたうえで実施されることになっています。
一方で、事前の連絡も日程調整もなく、いきなり税務署の調査官が来ることもあり、
このような税務調査は「無予告調査」と呼ばれています。
無予告の割合
無予告調査が実施される割合については、最近は国税庁から公表されていませんが、
数年前の資料を見ると、税務調査が実施される件数のうち、
「個人事業主の2割」「法人の1割」が無予告調査となっていたようです。
下記にあるように、平成25年から法改正が行われ、
無予告調査に要件が定められましたので、
以前よりは無予告調査が減ったのかとは思いますが・・・
それでも、件数にすれば、数多くの無予告調査が実施されていることは間違いありません。
現金商売は無予告調査に入られやすい?
特に、飲食店などの「現金商売」の事業者には、無予告調査が入りやすいと言えるでしょう。
なぜなら、現金商売は「売上金額などをごまかしやすい=税務署が把握しづらい」からです。
すべての売上が、銀行口座に振り込まれている会社であれば、
通帳さえ確認すれば売上金額はガラス張りでしょう。
税務調査では、現金で受け取った売上が本当にないのかを確認すれば、
売上をごまかしているかどうかはわかります。
しかし、売上を現金で受け取る事業者は違います。
受け取った現金を、毎日レジから3万円を抜き、
売上金額も3万円少なく計上する。
この3万円を個人で隠されれば、
税務署も3万円の売上があったかどうかわからない、となるわけです。
ちなみに、毎日3万円の売上を抜いて、
年間で300日営業している飲食店があったとすると、
1年約1,000万円の売上を過少にして、約300万円を脱税していることになります。
税務署が現金商売を狙う理由はご理解いただけたかと思いますが、
真面目に申告・納税している現金商売を営む方にとって、
無予告調査は迷惑以外の何物でもありません。
突然税務署の人間が店にやってきても、店は営業しているでしょうし、
お客様が店にいれば何事かと思われてしまうことは間違いありませんね。
突然税務調査に入られたら
税務署は、現金商売だからという理由で無予告調査に入ることができるのでしょうか。
国税の規定には、下記のように記載があります。
「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/03_2.htm#a04_7
4-7(「その営む事業内容に関する情報」の範囲等)
法第74条の10に規定する「その営む事業内容に関する情報」には、
事業の規模又は取引内容若しくは決済手段などの具体的な営業形態も含まれるが、
単に不特定多数の取引先との間において現金決済による取引をしているということのみをもって
事前通知を要しない場合に該当するとはいえないことに留意する。
ここに規定されていることを簡単に書きなおすと、
「現金商売だからという理由だけで、無予告調査は行わない」です。
現金商売をしている方で、突然税務調査に入られたら、店に来た調査官にこう聞いてください。
「なぜ事前連絡もなく、税務調査が入ったのですか?」
そこで調査官が「現金商売だからです」と答えたとしたら、
上記規定に反していることになりますので、違法な税務調査と主張することが可能となります。
税務署は自身の判断のなかで無予告調査を安易に行いますが、
本当は無予告調査には要件がありますので、
現金商売の方は特に気を付けて対応してください。