税務調査において、調査官が「帳簿や請求書・領収書などを税務署に持って帰りたい」
と要請してくることがあります(これは「留置き」と呼ばれています)。
税務調査には、時間・日程の制約がありますし、
書類の精査や集計するだけであれば対面で行う必要もなく、
税務署に持ち帰ってからすればいい、という調査官の判断でしょう。
帳簿を渡すとなにが不便なのか?
ただ、帳簿書類などを税務署に持って帰られると、
納税者側として困る・不都合がある、というケースもあります。
帳簿書類を税務署に持って行かれると、
その間は過去の経理状況などを見返すことができなくなりますし、
また調査官に精査される時間を余計に与える結果となりますから、
否認指摘のリスクが上がる、ということも考えられます。
帳簿を渡さないといけないのか?
さて、調査官が帳簿書類などを税務署に持って帰るという要請に
応えなければならないのでしょうか?
この論点に関して、国税庁のホームページには下記の記載があります。
「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」《国税庁》
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
問10 調査担当者から、提出した帳簿書類等の留置き(預かり)を求められました。
その必要性について納得ができなくても、強制的に留め置かれることはあるのですか。
(答)
税務調査において、例えば、
納税者の方の事務所等に十分なスペースがない場合や検査の必要がある
帳簿書類等が多量なため検査に時間を要する場合のように、
調査担当者が帳簿書類等を預かって税務署内で調査を継続した方が、
調査を円滑に実施する観点や納税者の方の負担軽減の観点から望ましいと考えられる場合には、
帳簿書類等の留置き(預かり)をお願いすることがあります。
帳簿書類等の留置き(預かり)は、
帳簿書類等を留め置く必要性を説明した上、
留め置く必要性がなくなるまでの間、
帳簿書類等を預かることについて納税者の方の理解と協力の下、
その承諾を得て行うものですから、
承諾なく強制的に留め置くことはありません。
どうするのがいいのか?
このように、留置き=調査官が帳簿書類を税務署に持って帰るという行為は、
任意となっていますから、その要請を断ることもできることとされています。
帳簿書類を税務署に持って帰ることが当然かのように主張する調査官もいますが、
あくまでも、税務調査を受ける側がその要請に対して可否を判断できる、
ということは知っておきたい税務調査対応となります。