前回の「何月決算法人が税務調査に有利か?(前半)」では、
法人の決算月による税務調査の時期と、
税務署が実施する税務調査の件数との関係について解説しました。
結論は、「6~1月決算の方が税務調査に入られにくい」わけですが、
今回はその理由をさらに掘り下げて検証するとともに、
「税務調査は春に受けた方が有利」という事実を解説します。
何月決算法人が多いのか?
まず、日本では何月決算法人が多いのでしょうか?
その偏りについて検証してみましょう。
毎年、国税庁から「決算期別の普通法人数」が発表されています。
平成28年度の数字は下記となっています。
法人数
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin2016/pdf/04_hojinsu.pdf
<国税庁>
日本の場合は3月決算法人が圧倒的に多く、
約266万社のうち約51万社ですから、
20%弱の法人が3月決算法人であることがわかります。
決算期別の法人数を税務調査件数からわかること
さて、この資料における決算期別の普通法人数を、
税務調査の時期に分けてみると、このようになります。
2~5月決算法人:約110万社
6~1月決算法人:約156万社
前回の解説内容を含めて、ここから明確にわかることは下記のことです。
【前提事実】
- 秋の税務調査は春の税務調査に比べて2倍以上実施されている
- 秋の税務調査の対象となる2~5月決算法人の方が数は少ない
【結論】
6~1月決算決算法人というだけで、税務調査に入られにくい
国税はこの偏りをどう考えているのか?
このような明らかな事実関係がありながら、
あの厳しい国税がこの事実に気付かないはずはありません。
これには国税内の事情があります。
上述のように、日本は3月決算法人が多いのですが、
上場企業の多くは3月決算法人となっています。
上場企業(もしくはそれに準じる規模)になってくると中小企業とは違って、
税務調査も数ヵ月~1年かかることになります。
つまり、国税側の論理は、
2~5月決算法人の方が時間(や労力)を要する税務調査が多い
ということになります。
一方で、日本における上場企業は4,000社弱となっており、
それに準じる規模の法人を考慮しても、1万社もないはずです。
ですから、日本の99%を占める中小企業の立場からすれば、
国税は大企業の税務調査に時間を要しているからこそ、上記のような偏りがある、
ということになります。
税務調査は春に受けた方が楽
ここまでは、税務調査に入られやすい・入られにくい決算期について解説してきたわけですが、
実はまだ、6~1月決算法人の税務調査に有利である理由があります。
一般的な会社は、1つの区切りを4月(年度)として動いていることが多いと思いますが、
国税は毎年7月を分岐点として動いています。これを「事務年度」と呼んでいます。
これは、国税内の人事異動が毎年7月10日あるためです。
人事異動が終わってから、本格的に税務調査に動き始め、
6月には税務調査を収束させる、というサイクルで動いているわけです。
春の税務調査の多くは、
確定申告明けの3月下旬~4月から行われるわけですが、国税に勤める調査官は、
できる限り6月(中旬)までに税務調査を終わらせようとするインセンティブが働きます。
これは、7月10日に人事異動があって、その前後で体制が大きく変わるからです。
さらには、人事異動の1週間前である7月3日(内示日)にならなければ、
自身が異動するかどうかもわからないからなのです。
ですから、同じように税務調査を受けることになったとしても、
春の税務調査は収束の時期が決まっているようなもので、
納税者側からすれば調査官に交渉しやすいということになります。
反対の立場で考えれば、調査官も6月までに終わらなければならないので、
納税者の主張を受け入れざる得ない状況が多いということです。
これら複合的な観点で考えても、
6~1月決算法人が税務調査に有利ということなのです。
なお、法人の決算期は簡単に変更できますので、
税務調査が嫌いという方は参考にしていただければと思います。