税務調査は一般的に「任意調査」とも呼ばれています。
一方で、同じ国税が行う「強制調査」というものも存在します。
税務調査が「任意調査」と呼ばれていることから、
税務調査というものを勘違いしがちですし、
また「強制調査」との違いがわからなくなってしまいます。
今回は、任意調査とも呼ばれる税務調査と、強制調査の違いについて解説しましょう。
税務調査は任意じゃない!?
税務調査とは、法人や個人事業主の方々が毎年、
自身の所得や納付すべき税額を計算し、
税務署に提出する確定申告書について、
その内容が合っているのかどうかを国税調査官が調査する行為を指しています。
日本では申告納税制度を採用していますので、
あくまでも納税者本人が税金の額を計算し、
確定申告したうえでその税額を納付することになっているのですが、
国税としても、自己申告をそのまま信じるわけにもいかないことから、
税務調査を実施して、申告内容の適否について確認する、ということです。
すでに、
「税務調査を断れませんか?」
でも解説しましたが、税務調査を断ることはできません。
税務調査は「任意調査」とも呼ばれていますが、
断ることができないという観点からすると、実質的に「任意」とは言えないでしょう。
強制調査って何なの?
さて、国税が行う強制調査と、税務調査とは何が違うのでしょうか?
強制調査とは、国税査察官(通称「マルサ」)が裁判所の発行する「強制調査許可状」を
持って実施されるもので、あくまでも脱税検挙・摘発のために実施されるものになります。
裁判所の令状を持っているくらいですから、強制調査に入られる方は、
脱税をしている可能性が高く、その証拠もほぼ揃っている状況です。
税務調査は一般的に、事前に連絡があり日程調整のうえ実施されることが多いのですが、
強制調査は令状を持った国税査察官が複数人で突然、自宅や会社に来ることになります。
また、税務調査では、あくまでも自身で確定申告した内容を国税が精査するものですから、
関連する帳簿資料等を提示すればいいのですが、強制調査では令状がありますから、
帳簿資料のみならず、私物であっても検査の対象となり得ます。
さらに、税務調査では顧問税理士などが一緒に立会うことになりますが、
強制調査の場合、顧問税理士がいたとして立会うことは許されていません。
「国税」という言葉を使うと、「マルサですか?」と
言われることも多いのですが、国税内には明確な区分があって、
国税調査官:税務調査(任意調査)を行う担当
国税査察官(マルサ):強制調査を行う担当
となっており、
国税調査官が強制調査を行うことはありません(そのような権限はありません)。
なぜ税務調査が任意調査と呼ばれるのか?
ここまでで、税務調査(任意調査)と強制調査の違いをご理解いただけたかと思います。
では、断ることもできない税務調査が、なぜ任意調査と呼ばれるのでしょうか?
任意調査という言葉は、
あくまでも強制調査との比較において呼ばれている一般名称です。
強制調査とは裁判所の令状があって強制力がある、という意味合いです。
一方で、税務調査はあくまでも、
令状がないという意味合いにおいては強制力はありません
(納税者の理解と協力が必要です)から、任意調査ということなのです。
税務調査が任意調査と呼ばれていることから、
税務調査を拒否したりできると思っている方が多いのですが、
それは違うということです。
この点は、ぜひ注意してください。