最近は従業員に対する福利厚生的な意味合いから、
業務中のランチなどを会社が費用負担する会社も増えているようです。
また、店舗系の事業など、顧客対応が常に発生する会社の場合は、
明確にランチタイムが取れないことから、
会社が食事を準備・提供する会社も存在します。
さて、会社が従業員のランチなど食事代を負担した場合、
税金はどうなるのでしょうか。
従業員に対する経済的利益には課税
食事負担の課税関係を説明する前に、
原則となる考え方を解説します。
まず、「経済的利益」を理解いただかないと話が進みませんので、
課税される・されない経済的利益の考え方については、
下記のコラムをご覧ください。
「会社が社内旅行の費用負担をしたら税金はどうなる?」
会社が従業員の食事代を全額負担することになると、
会社が従業員に対して実質的に金銭を支給したのと同じと認められることになりますので、
給与の上乗せとして計算することになり、
従業員が負担すべき源泉所得税の金額が増えることになります。
源泉所得税は、
従業員の給与から天引きして会社が納付することになりますので、
食事代などの経済的利益が発生した場合は、
従業員の天引き金額が増えて、
従業員の手取り額が減ることになる一方で、
会社が納付する源泉所得税が増えることになります。
また、経済的利益があるにもかかわらず、
源泉所得税の天引き額を増やしていない場合、
税務調査においては会社が追徴税額を支払うことになりますので、
注意が必要になります。
従業員の食事代を会社が負担しても課税されない要件
では、月に1万円分(月に20日勤務とすると1日あたり500円)の従業員の食事代を負担していた場合、
絶対に給与額に1万円上乗せして源泉所得税を納めることになるのかといえば、そうではありません。
税金上は、要件さえ満たせば、
経済的利益が発生しなかったものと考え、課税しないことになります。
その要件は、下記の国税庁ホームページに明記されています。
「No.2594 食事を支給したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm
ここにあるように、
食事代の費用を従業員に対して課税しないためには、原則として、
下記2つの要件を満たす必要があります。
①役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
②次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
月に1万円の食事代で考えると・・・
上記の考え方から結局、
会社と従業員はいくらずつ食事代を負担すれば、
追加的な税金は発生しないのでしょうか。
例えば、その月に支給した食事代が1万円(税抜)である場合において、
役員または使用人から徴収した食事代が6,500円以上であれば、
その食事の支給による経済的利益はないものとされますので、
税金は発生しません。
一方で、その徴収した食事代が6,500円未満のときは、
1万円からその実際に徴収した食事代を控除した残額相当額が、
経済的利益として給与課税されることになります。
1万円の食事代で、
従業員から2,000円しか天引きしていない場合で考えると、
6,500円-2,000円=4,500円が給与の上乗せとして考えることになりますから、
例えば月額給与が30万円の従業員の場合、
304,500円の給与と考えて源泉徴収税額を天引きし、
会社が納付することになります(4,500円分に所得税が追加的に発生する)。
食事代負担に課税されないために
従業員のためによかれと思って食事代を会社が負担した場合であっても、
上記のように税金は課されるので注意が必要です。
食事代の支給によって、会社・従業員に追加的な税金が発生しないためには、
「従業員に食事代の半額以上を負担させること」、
かつ「会社負担額が月に3,500円以内にすること」
の両方を満たす必要がありますので、ぜひ注意してください。