事業を個人事業主として行っている場合で、
「法人にした方が節税になるの?」という質問・相談が多くあります。
また、不動産投資・運用を行っている場合も同じで、
当初は個人名義で不動産を購入していたが、
法人を設立して不動産投資・運用をした方がいいのか、
という疑問を多くの人がお持ちでしょう。
今回は税務上、個人と法人の「経費の(範囲の)違い」について解説します。
原則的な経費の考え方と違い
税務上、確かに個人(事業主)と法人の場合では、
下記のとおり、経費がどこまで認められるか、という違いは存在するのですが、
あくまでも原則的な考え方は同じで、事業上の支出は経費になりますが、
個人的(プライベート)な支出は経費にすることができません。
法人にすれば、個人的な支出(特に飲食代)が経費になる、
という見解を見ることがありますが、それは明らかな間違いです。
個人では経費にできないが、
法人にすると経費にすることができる項目は、主に下記になります。
社宅にすることで家賃が経費に
賃貸マンション等に住んでいる場合、
個人の場合はあくまでも自宅家賃ですから経費にすることはできませんが、
法人の場合は、法人が賃貸物件を借りることで、社宅扱いにすることができ、
経費が増えることで節税することができます。
詳細はこちらのコラムをご覧ください。
「会社の借上げ社宅に住んだ場合、本人からいくら徴収すればいいか?」
出張日当は非課税で節税できる
個人の場合、出張等があっても日当を支給することはできませんが、
法人の場合は日当を支給することによって節税することができます。
詳細はこちらをご覧ください。
「日当はいくらまでなら許されるのか?」
退職金を支給することができる
個人の場合、自分(事業主)自身が事業をやめても、
退職金を支払うという概念がありませんが、
法人の場合であれば、社長自身に退職金を支給することができます。
退職金を支給した法人は、
(不相当に高額でない限り)その金額を経費にすることができますし、
退職金を受け取った個人は、税制上給与などとは別に優遇されていて、
退職金になることで手取り額は増えることになります。
「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
<国税庁>
生命保険料や小規模企業共済などの掛金
個人の場合、生命保険に加入すると生命保険料控除として、
保険料の一部を控除することができますが、
最大でも年間4万円となっており、節税効果としては非常に限られています。
一方、法人で保険に加入すると、保険の種類等によっては全額もしくは半額など、
経費にできる範囲・額が増えますので、節税効果が高くなります。
また小規模企業共済は、個人で加入する場合、
ある一定の規模である必要がありますが、
法人の社長になると、事業的規模でなくても加入することができます。
なお、不動産収入の場合、
経営セーフティ共済など加入できない場合もありますので、注意が必要です。
法人の方が経費の範囲は広いのか?
上記のように、法人の方が経費の範囲は広くなりますが、
一概にそうとは言い切れない項目もあります。
例えば、個人事業主の場合、交際費の金額に上限はありませんが、
法人の場合は年間に800万円までしか経費にすることができません。
「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
<国税庁>
一方的に法人の方が経費の範囲が広くて有利、とは言い切れないわけですが、
事業の規模が大きくなってくれば、間違いなく法人の方が有利になりますから、
ぜひ参考にしてください。